社会福祉法人若水会様の、市立保育園の民営化に伴う新園舎の設計を依頼いただきました。若水会様の保育方針として、子ども同士のトラブルについて、保育者が積極的に介入するのではなく、できる限り子ども自身での解決を見守っていくという姿勢や、食事の時間には子ども自身が食べたいタイミングで食事の部屋に行き、自分で盛り付け、食べ終わったらそれぞれで保育室に戻るなど、主体性を育くむとりくみなどが挙げられます。 また、遊びの場面では、室内外を問わず3,4,5歳児のそれぞれが過ごしたい場所で遊んでおり、年齢が異なった児童がともに遊ぶ環境づくりが求められました。
1階には、事務室と厨房から離乳食を出せる0歳児保育室を設け、1~2歳保育室を設けています。1~2歳はトイレを共有しつつ、トイレに入る入口を各保育室から入れるように分けています。また廊下に面したアーチのかかっている空間は、遊びの部屋とトイレとの間をつなぐ「気持ちを整える場所」として設計しています。1階の園庭の親の出入りする玄関はあるが、1階はすべて掃き出し窓にしており、1~2歳児の子どもたちは掃き出し窓から外履きをはいて外に出ることができます。その園庭から、廊下に入り、また手洗いをして、気持ちを切り替えて、室内の空間にいくという、気持ちのグラデーションを空間に反映しています。
2階は園庭が見渡せる広い廊下があることが特徴です。この廊下は写真では子どものテーブルが並んでいますが、ここで「食べたいときに」食事をとるという保育方針から廊下を広く設けています。一斉にご飯を食べ始めて食べ終わる「食堂形式」は、子どもの個性よりも、集団行動に重きを置いてしまうため、若水会では、廊下で食べたい時間に食べ始め、ゆっくり食べたい子どもはゆっくり食事を食べることができる場所を確保しています。
時期 | 2022 |
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設計 | 前田茂樹 / 福原信一建築設計事務所 |
構造設計 | MOF | 設備 | 島津設計 |
施工 | 江中工務店 |
所在地 | 東京都立川区 |
撮影 | 繁田諭 |