敷地のあるスイスのツークで進む人口増加は、ツーク州立の中等教育機関に大きな影響を与えています。2012年、新たに高等学校を新設する計画が立案され、立地として「Rotkreuz(ロートクロイツ)」が選定されました。ロートクロイツは、SBB(スイス連邦鉄道)の近代化計画に後押しされた、住宅、ビジネス、交通の成長拠点であり、その中心となる駅の近くに44クラス分が収容できる大規模な高校を新設することが求められました。
私たちの提案は、これまでのツーク州の教育環境の良さを維持するためのリング状の教室群と、教室群の中心にあり、デジタルデバイスによる教育環境や、自習したり友人と一緒に勉強するためのアトリウムによって構成されています。 生徒たちは授業の間にアトリウムを通って移動をすることで、他の学年の活動などに接する機会が生まれます。天井は木の梁とブリーズソレイユにより、拡散光や木漏れ日のような光がアトリウム全体や教室まで明るくします。吹抜けに面する場所は、天井や壁に木材の襞があることに加えて、吸音性能の高いパネルを設置することで、教室の外での授業運営を可能にします。階段の蹴上や床にコンセントを仕込み、将来のデジタルデバイスによる教育環境にも適応します。プラットフォームを支える木構造の格子は、2階や3階に森のような落ち着ける空間をつくり出します。その場所は、学生たちが、放課後に自習したり、友人と一緒に勉強することを促します。木材の格子は構造部材ですが、現しにして、将来の配管や配線工事の増設にも対応します。 私たちは、デジタル社会における教育環境のために、用途の変更やニーズに合わせて改修が容易であることを目指すと同時に、学校という場所が、最も多感なティーンエイジャーが家よりも長い時間を過ごす生活の場所なのだということを再確認し、自らより快適な場所を見つけることの出来るような場所となることも目指しました。
時期 | 2025 |
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設計 | 前田茂樹 |
構造 | LÜCHINGER MEYER PARTNER SL |
環境設備 | 荻原 廣高 |
所在地 | Risch-Rotkreuz, Swiss |