黒谷和紙は、約800年前から続く手漉き和紙の技法を守る綾部市の伝統産業です。施設の老朽等により、組合の本拠である黒谷和紙会館と工芸の里との2施設の運営が困難となったことなどから、施設機能を集約し、かつ多人数の紙漉き体験・見学に対応できる機能を備えた和紙工房を新設することが求められました。
私たちは、新しい黒谷和紙の工房を「真の手づくり」の精神が息づく場所として設計しました。黒谷の豊かな自然や歴史ある風景に溶け込み、黒谷川や熊野神社のように、地域に静かに佇む存在を目指すとともに、環境に配慮し、地中熱や太陽光などの再生可能エネルギーを積極的に活用することで、環境負荷を抑えながらも、現代の技術で快適性と生産性を高めました。これにより、伝統的な和紙づくりを継承しつつ、未来へ続く持続可能な工房となることを目指しました。 また私たちは、「真の手づくり」を知る体験は、” 良質を求めて全国を旅する、歓迎すべき国内外の旅行客” にとっての「目的地」となりえる重要な要素だと考え、「真の手づくり」や「本物」を追求する交流や体験をきっかけに、長期的な後継者育成、新たな販路開拓や異業種・異分野との連携など、多様な展開を推進し、黒谷地域の方、運営サポーターを含む設計チーム、行政が一体となり共に育む創造的な工房となることも目指しました。内部の仕上げ一つにも、職人一人ひとりの卓越した技術と個性を反映させる工夫を散りばめ、訪れる方々に職人の技の素晴らしさを直感的に伝えるとともに、黒谷和紙の魅力を多角的に発信し、和紙の販路拡大やブランド価値を高める重要な要素となることを目指しました。
時期 | 2025 |
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設計 | 前田茂樹 |
構造 | MOF 江 田 拓 也 |
設備 | 島津設計 |
所在地 | 京都府綾部市 |