大阪の地下鉄御堂筋線と直結する北大阪急行線の延伸に伴う新駅が,千里丘陵に位置していることから,駅の出入口である地下3階と,地上及び歩行者デッキのある地上2階を直接結ぶためのエントランス空間である。梅田駅から30分以内で往来出来る利便性を持ちながら,山や滝などの自然環境の豊富な箕面市に来たこと,住んでいることを感じる駅であること,そのために駅エントランス内に自然地形がつくり出すような余白をつくり,雨を遮り自然光や風を取り入れることで,人が自然の中で振舞うように,思い思いに佇む,新しい駅の風景を生み出すことを目指した。桜並木もかつては計画して植えられたものが,コモンズとして手入れをされ,四季を通じて人の振舞いに影響を及ぼす。自然ではない土木構築物により,いかに自然に近い様相をつくることが出来,その様相に人が居る風景自体がコモンズとなり得 るかを考え続けた。
この駅エントランスは土木としてのスケールを持つ構築物としてつくられているが,人流を可視化するエスカレータを中心にした吹き抜けの周りに,人が自分の居場所を見つけて居たくなる小さなスケールの空間を多数設けた。敷地形状に合わせて地下3階から地上まで45度ずつ折れ曲がって上がる階段は,道路として認められる4m以上の有効幅員を確保している。階段から脇に逸れると形状や幅の違う踊り場があり,その踊り場が立体的な地形のように重なることで,お互いの視線が交わらない劇場のような立体空間をつくっている。土留めでもある擁壁が工法上,地下3階まで垂直に存在するために,各階段の裏側に必然的にできる空間にはギャラリーや事務室を設けている。ギャラリーは,地下鉄の改札を出た直後にある地下3階のカフェとともに,地域で文化活動をしている指定管理者が運営し,駅エントランス内に滞留するきっかけづくりを民間の活動により継続する仕組みも箕面市が策定した。
複数の膜屋根の柱は,折れ曲がる階段やエスカレーターを避けた上で,柱位置を決定している。大屋根の高さに応じて,梁は互いにレベルが異なるが,3本もしくは4本の柱で各屋根を支持しながら,全体でひとつの架構として設計している。その架構の上にピン節合されたトラス構造の7枚の屋根の重なり具合は,全方位から30度の角度で雨が降る状況になっても,エスカレーターには雨が掛からないことをシミュレーションにより確認している。その結果,地下でありながらも, 膜を通した拡散光と,重なりの間から漏れる自然光や風により,刻々と移り変わる自然を感じる空間が,改札口を出た瞬間に感じられる。またエスカレーターに乗った際には,視点の上下移動により,地下から地上へと移り変わる空間の見え方が移り変わり,余白の空間で思い思いに佇む人びとを見渡すことが出来る。
時期 | 2023 |
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設計 | ジオ-グラフィック・デザイン・ラボ+東畑建築事務所設計共同体 |
構造設計 | 東畑建築事務所 |
グラフィック | UMA / design farm |
施工 | 村本建設 |
所在地 | 大阪府箕面市 |
撮影 | 時空アート |